プロフェッショナルガイド杉戸繁伸の
琵琶湖ガイド情報

2006年4月19日
Vol.293
FD TS Crankin'物語

 本来はもっと早くUPするつもりでしたが、今日になってしまいました。なんせ貧乏暇なしフル回転操業で毎日を送っていますのでご勘弁を!!

 さて、おかげさまでアンタレスDCの販売は盛況で、工場もフル回転、予想以上の反応でうれしい限りです。すでにFD & DCのセットを購入された方も結構おられます。はたまた、購入したいけど物が入ってこないというお叱りの連絡もなぜか私に多数いただいております。あいにく私にはどうすることもできません。こんな機会ですからシマノに電話して聞いてみてもいいかと思います。たまにはエンドユーザーの生の声を聞いてもらうのも悪くないと思いますから。組織が大きくなればなるほど、エンドユーザーの声は届きにくくなるものですからね。

 ちなみに、私達シマノのインストラクターとて同様の悩みを抱えることは多く、エンドユーザー、自分の釣り、シマノイズム、その間で翻弄されることも多い。それは社員も同じで、インストラクターに振り回されることも多かったと思います。特にこの数年はシマノの中で何かが動き始めたのは事実。その動きの中に関われたのは、自分にとっては光栄なことだったと思う。しかしその流れの変化ゆえ新人の私には戸惑いも多く、そのときによき相談役だったのが、シマノ3兄弟の長兄、ツカティ(塚本謙太郎)でした。

 私の場合、釣りの技術が高いだけの人にはそれほど興味はなく、釣り人としてのその人間性に興味があります。ツカティと初めて出会って、その3時間後には私の家に上がり込み大盛り上がり。その光景を見て、私の嫁さんが、「あんたら数時間前に初めて会ったところやろ〜。信じられへん」と一言。同じ匂いを感じると、出会ってからの時間なんて何の尺度にもなりません。今一緒に釣りの話ができる友人もそんな感じですね。

 そんなツカティですが、本来なら私との接点はまったくなし。お互いの釣りをしてきた環境を考えると、こうやって一緒に仕事をする可能性は絶対にありえない関係なんです、実は。コウティ(桐山孝太郎)とて同じ。業界人なら理解できますよね〜!! ですから、その流れの大きさを痛烈に感じるのは私だけではないでしょう。そんな大きな流れの中で生まれたファイナルディメンション、実はファイナルではなく、ファースト、すべての始まりなんです。これからのシマノ、ご期待ください。私は嘘は言いませんから。

 それでは、前回お約束していたFDのインプレといきましょうか!! 今回はFDのベースとなるモデル、クランクモデルについてです。このモデルはクランカーとしての意地とプライドにかけて、ツカティ&コウティが長い年月をかけて誕生させた名刀で、現在、私にとってもなくてはならないモデルとなっています。ただ、決して安くはない買い物ですよね〜!! FDのクランクロッド2モデルのうち、どちらを買えばよいのかという質問がかなり多かったので、このインプレを参考にしていただければと思います。

 それでは、ここからは、ツカティにバトンタッチします。では、かわら版初登場。シマノ3兄弟、長兄にかましてもらいましょう!!

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■FD TS-1610 Crankin' MLF or MF? by 塚本健太郎

 かわら版読者の皆様、初めまして!! シマノFD3兄弟の塚本です。今回は「610 Crankin'の使い分け」について杉ティより説明依頼がありましたのでおじゃましました。さて、すでにご購入いただいた皆さんより、「初めて使ったのにすぐに身体になじむ」とか、「僕のためにあるようなロッドをありがとう」とか、はては「今までのロッドが使えなくなった。どうしてくれる!!」という意味不明(?)なものまで、全国からたくさんの反響をいただき、3兄弟を代表して御礼申し上げます。

 今回のFDは、実はこの610クランキンよりスタートしました。今を去ること3年前、フィッシングショーにてロッドの設計担当者にアクラブのグラスシリーズ製造方法をベースとし、レングスやテーパー等のバランスを取りなおしたもののワンオフ製作を依頼したのがきっかけです。その後、このロッドは全米ツアーで戦う桐山孝太郎プロに速攻奪われそうになるなど様々なドラマを生み、次期バスロッド開発の中核になっていったのです。これまでに日本でも多くのグラスロッドが発売されましたが、どれもブランドのお荷物で、シリーズの中心になることなどあり得ませんでした。当然、シマノもこの方向性には難色を示し、何度発売が危ぶまれたことでしょう。しかし開発責任者の英断により、こうして皆さんにお届けすることができた次第です。

 シマノがアクラブシリーズを発売した際、注目する人はほとんどいませんでした。しかし、このシリーズに採用された各モデルのブランク製造方法は実に画期的なものでした。中でも、グラスクランキンシリーズに採用されたUDファイバー&バイアスのコンポジットは、これまでに様々なグラスロッドを使用し、その上でグラスの使用をあきらめた僕にとって驚くべきものだったと言えます。

 通常オールグラスによるクランキンロッドには、ダルさやブレ、捻れといった問題が付きまとうほか、キャスタビリティの向上を狙ったバットパワー増加を目指すと、大径化によるグリッピング感の悪化やトータルウエイトの増量といったデメリットばかりが目立つようになります。フィジカル面に優れたアメリカ人であれば、それらからメリットだけを引き出すことができても、平均的日本人男性でその筋力を長時間維持することは困難であると思われました。

 それらを解消するため、各社で開発されたのがティップがグラスで、バットがカーボンのコンポジットロッドです。しかし、この製法にはいくつかの問題があり、一つはティップとバットの反発力差が極端になり、キャスト時にスイートスポットを外すとバックラッシュが増えるのと、あまり柔らかいアクションのロッドを作ると焼き上がりが曲がってしまう製品不良を乱発しやすいという点です。また、バットのみを強化しても、本来一番非力なティップにネジレが集中するのみで、抜本的な解決にはなりません。むしろリリースタイミング次第でどこへ飛んで行くかわからないロッドになってしまう恐れすらあったのです。

 そのため、これまでのコンポジと言えば、加重と反発による応力が一点に集中しやすいモデルや、それを防ぐため、グラスなのかカーボンなのかよくわからないどっち付かずのモデルになったりしていました。シマノのUD & バイアスでは、縦繊維で構成されたグラスロッドの内側に最低限の潰れ剛性保持のためカーボンチューブラーの芯が走り、外側から極薄のカーボンテープでX状に締め上げる構造になっています。つまり余分な方向の肉を落したグラスロッドに、カーボンの背骨と筋肉で両面からアシストする構造になっているのです。この剛性の高い構造により、極限まで反発力を落すことができ、各部の弱点を補い合う形でメリットのみを引き出すことが可能になったのです。

 振動を伝えるには振幅が必要ですが、振幅が大き過ぎるようでは振動波長とシンクロし難くなります。グラスとカーボンが補い合うことで、必要な振動を、必要なだけ伝えることができるのです。ブランクの表面を電光石火で伝わってくるのが高弾性カーボンロッドの感度とするならば、ブランクの、それもベリー部分の内側でクランクベイトが泳いでいるような感度こそがUD & バイアスの感度なのです。この感覚は文章やDVDで伝えられるものではありません。ぜひ杉ティのガイドで体験してみてください。きっとグラスロッドに対する認識がかわってくると思います。クランクベイトフィッシングが大好きな人なら、ウォブリングの「底」を感じるような感触が、思わず病み付きになっちゃうでしょう。

 2006年発売に向け、610クランキンの開発を進める上で、一つの問題点というか選択肢に直面しました。琵琶湖のような広大なレイクをサーチするときや、急深なリザーバーを攻める際、マッドペッパーマグナムやセダー400のような大型クランクベイトをロングキャストする必要があったのです。10〜17g程度のシャローからミディアムクランクでの使用感を前程に進めてきたTS-1610MLFよりも、やや張りが強いモデルの開発は、ビッグレイクを主体とする杉ティ、コーティからも強い要望があり、スターティングアイテムとしの展開が急務となりました。

 そもそも1610MLFは、馴れてくればタイニーサイズからビッグサイズまで、グラス特有の幅広いパワーバンドが売りであり、スローリトリーブであればビッグクランクであっても問題なく使えるトルクを持っています。しかし、効率を重視したハイスピードリトリーブや強風下でのロングキャストとなると、もう少しだけ張りがほしい。そこで登場したのが、UD & バイアス構造に、さらにバット部分にカーボンをアシストしバットパワーを増す方法でした。あくまでティップのフレキシブルなフィールはそのままに、ベリーからバットにかけてはよりパワーを持たせたロングキャストモデルの方向性がにわかに浮上したのです。

 このモデルにも、短期間ながらMLFと同等数のプロトを製作し、急速で煮詰めていきました。なぜなら「まだぁ〜?」と急く御仁が2名ほどいて、琵琶湖とアラバマから督促が来るからなのです。こうして完成したTS-1610MFは、ビッグクランクのほか、ギア比7:1を使用しても弾かず乗せてしっかり掛けるバイブレーションロッドとして、ショアラインを高速でサーチする際、バズベイトやスピナーベイトのゴツいシングルフックでもガッツリ掛けるフッキンググラスロッドとして、クランク専門のMLFをサポートするロッドとしてデビューするに至ったのです。

 この2本、皆さんの使用条件によって選んでもらえたら幸いです。しかし、これだけのロッドを作れるとなると夢はさらに膨らんできます。リザーバーや河川において、タイニークランクやフラットサイドクランクによるシャローゲームなんかも楽しいですよね〜。思わず担当者のシブ〜イ顔が浮かんできて、さらに楽しくなってしまいます……。

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 さあ、どうでしたか!? 彼がいかに入魂してこのモデルを作り上げたかわかってもらえたでしょう。FDはメーカー主導ではなく、開発、現場、インストラクターがいろんな垣根を越えて一丸となって作り上げた作品なんです。その血統は今も続いています。今後のFDにもご注目ください。

 今回はFDのインプレでした。数日後には先週の週末情報をUPしますね。そのときには、残り数日しかない5月のガイド空き日も掲載しますので、よろしくお願いします。

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