<Bassingかわら版/環境問題のコーナー>

利用適正化推進会議が97年春からスタート
めいわく駐車とゴミ問題が深刻化する
兵庫県青野ダムの環境問題を考える

ゴミ除去に年間3000万円以上かかる青野ダムについての取材報告
ゴミ拾いOLMに参加。問題解決に取り組むメンバーの熱意に感激


 97年3月9日夜に宝塚市の立柳さんというバスアングラーの方からインターネットで次のようなメールが届いた。

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 始めまして。立柳と申します。私も一釣り人として日頃、琵琶湖をはじめダム湖、野池等でバス釣りにいそしんでおります。

 宝塚市に住んでいることもあり、三田市の青野ダムによく出かけるのですが、最近のバスブームの影響もあり、ここ1年ほどの間にかなりフィールドが荒れてしまいました。ゴミの多さが目に余ります。

 ゴミの問題だけでなく、周辺道路での違法駐車、交通事故、盗難などが多発しており、私も9月にバイクと正面衝突(バイクが逆行してきて衝突、大事には至りませんでした)をし、また一昨日には駐車場で車の部品をもぎ取られてしまいました。

 秋ごろから市の広報車、警察が土日には必ず巡回をしているのですが、これでは釣りをのんびりとやっているどころではありません。

 最近の環境悪化を見かねた市が、4月に環境問題を調査する委員会を設立し調査、そして対策を考えるという話を聞いています。おそらくこのままでは何らかの規制がされることは間違いなく、最悪釣り禁止になることも予想されます。

 一方で有志の釣り人によるゴミ回収がされているのも事実です。インターネット、ニフティーなどのフォーラムでゴミ拾いOLM(オフラインミーティング)が企画、実行されています。こういう草の根活動は非常に重要であると思いますが、メディアにはかなうものはないと思うのです。

 こういった地道な活動をされている人をもっと大々的にアピールしていくために、ぜひとも力をお貸し願いたいと思います。釣り新聞、テレビ等で取り上げられればより効果的でしょう。

 青野に限って言えば、かなり問題が深刻化しており危機的な状態であるといえます。東播の名スポットとして何としても釣り禁止だけは避けたい、そう思っています。今ならまだ間に合います。私たちも早く行動に移したいと考えています。

 服部さんの御意見をお聞きしたいと思います。御多忙とは存知ますがよろしくお願いします。

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 このメールで取り上げられている兵庫県の青野ダムは、近畿圏でも有数の人気フィールドであり、1年を通して訪れるアングラーが非常に多い中規模の湖だ。もしここがゴミ問題やめいわく駐車などが原因で釣り禁止ということになったら、事態は青野ダムだけではすまず、全国の釣り場に波及することも考えられる深刻な問題である。そこでさっそく、この問題について調べてみた。

 三田市と兵庫県に問い合わせてみたところ、次のような動きがあることがわかった。

 青野ダムでゴミや迷惑駐車が問題になっているのは、立柳さんからのメールにある通りだ。そこでアングラーや地元の人たちが中心になってゴミの回収をしたり、県が業者にゴミの回収を委託したりしているが、出るゴミの多さに対してとても間に合わない。

 また、めいわく駐車ばかりでなく、大型の4WDが乗り入れたために未舗装の道が荒れたり、田畑のあぜ道が崩れたりという問題も起こっている。たき火や野外料理に使った火が原因でボヤ騒ぎが起こり、消防や警察が出動したことも何回もあるそうだ。

 このよう問題を解決するために、青野ダム湖利用適正化推進会議という組織が設けられることになり、そのための予算が兵庫県の平成9年度予算の中に用意された。この会議の目的は、青野ダムの管理者と地元の代表、利用者の代表らに意見を聞いたり、問題を解決するための提案をしたり、というようなことが考えられている。ただし、まだ予算が付いたばかりの段階なので、どういう編成にするのかとか、どういう活動をするかということは、これから具体的化していくようだ。

 この原稿を書いている段階でわかったのは、およそこのようなことだ。同会議については、97年3月7日の産経新聞に記事が載り、これを見たアングラーがパソコン通信などで話題にしたようだ。この問題については、これからさらに詳しく調べて、ご報告したいと思っている。

 今回、立柳さんと交わしたメールの内容については、青野ダムの環境問題に関する書簡のページで詳しく紹介しています。


ゴミ除去のために年間3000万円以上かかる
兵庫県青野ダムの環境問題についての取材報告

 ここ数年、兵庫県青野ダムで釣り場のゴミやめいわく駐車の問題がかなり深刻化している。これらの問題を解決するために、97年4月から青野ダム湖利用適正化推進会議が設けられることになり、兵庫県の平成9年度予算に盛り込まれた。この件については前々回の本欄でも簡単に紹介した通りだが、3月25日に青野ダムを管理している兵庫県の出先機関である北摂整備局土木課へ取材に出かけたので、さらに詳しくお伝えしたいと思う。

 青野ダムは三田市内の丘陵地にある中規模のダムだ。完成したのは87年のことだから、比較的新しいダムと言える。蓄えられた水は上水道や工業用水、潅漑用水などに利用されるほか、洪水調節の役割もはたしている。

 三田市は大阪、神戸などの大都市から近く釣りに行くにはとても便利な場所だ。青野ダムのまわりは傾斜が緩やかな丘陵地だから、湖岸もほとんどは足場がよく、バスの岸釣りにもってこいの地形を備えている。

 青野ダムでバスが釣れ始めたのは完成直後のことで、その後は次第にアングラーの評判が高まるばかりだった。その理由は、やはりバスがよく釣れることと、岸釣りがしやすい釣り場の割には規模が大きいので、何カ所ものポイントを移動したり、いろんなタイプのポイントを狙ったりといったバスフィッシング本来の楽しみ方ができるからだろう。

 ところが、アングラーの数が増えるにつれた、様々な問題が起こるようになってきた。これがそのような問題かというと、湖周辺に捨てられた大量のゴミやめいわく駐車などが中心で、料理の火の不始末によるボヤ騒ぎや農道の路肩をつぶされたりというようなことも起こっている。また、野鳥や水鳥の数が減っているというデータもある。

 青野ダムへやってくるアングラーの数については96年のゴールデンウィークに兵庫県が調査してたデータがある。それによると、4月27日から5月3日の7日間に青野ダムへ釣りにきていたアングラーの数は合計7789人、周辺の駐車台数は2889台、浮かんでいたボートの数はカヌーなども含めて539隻。単純に平均すれば、1日に1000人以上のアングラーと400台以上の車が集まり、約75隻のボートが浮かんでいたということだ。

 ゴミの問題は、すべてアングラーが捨てたものではないが、その始末に膨大な費用がかかっているのも事実である。兵庫県では青野ダム周辺の清掃のために、年間実に3000万円以上の予算を投入しているそうだ。

 現在、青野ダムでは週末のパトロールの強化や立て看板を建てるなど、アングラーに協力を呼びかける活動が行われている。また、アングラーの中からも積極的にボランティア活動としてゴミの回収をするグループがいくつも現れている。

 ところが、それではとても間に合わないのが実状だ。そこで、現在起こっている様々な問題を少しでも改善し、将来に渡ってバランスよく利用していくための足がかりとして、青野ダム湖利用適正化推進会議が設けられることになった。

 会議の構成は、兵庫県や三田市など自治体の代表、地元の代表、学識経験者、自然保護段階の代表などに加えて、アングラーやカヌーイストといった利用者の代表も参加する。活動は4月中ごろにスタートし、年度内に5回から6回の会議が予定されている。兵庫県ではこのために約500万円の予算を組んでおり、資料の収集や調査、様々な提言を行う。

 気になるアングラーの代表者に誰が選ばれるかは、取材の時点でもまだ決まっていなかった。現在、適当な人を探している最中だ。それと、もう一つ気になる釣り禁止の問題だが、青野ダムについては兵庫県としても市民に開かれた湖を目指して利用の適正化を進めており、明日にも釣り禁止になるようなことはないという返事だった。

 ただし、鳥類の保護などのとの兼ね合いから、一部が釣り禁止になったり、特定の期間だけ立入禁止のエリアが設けられることは十分にあり得る。このあたりの判断に関して、青野ダム湖利用適正化推進会議の活動の成果が大きな影響力を持つことになるわけだが、最悪の結果を招かないためにも、アングラー自身のマナーの向上が一刻も早く求められている。


青野ダムゴミ拾いOLMに参加
問題解決に取り組むメンバーの熱意に感激

 97年12月14日に兵庫県青野ダムでNIFTY-Serveの釣り関係フォーラムのメンバーを中心とするゴミ拾いOLM(オフラインミーティング)が開かれ、31人のアングラーが集合した。

 パソコン通信やインターネットなどを通じて普段ネットワーク上で交流している仲間たちが、ネットワークを離れてどこかの場所に集まって行う活動をネットワーク上の「オンライン」に対してオフラインミーティング、略してオフ活動などと言う。今回のオフはNIFTY-Serveのメンバーが中心になって、フォーラムやインターネットを通じて参加を呼びかけたもので、今年5月にスタートしてからこれが3回目。青野ダムがある三田市が広く市民に呼びかけて各所で清掃活動を行うクリーンデーに合わせて開かれ、毎回30人前後のアングラーが集まっている。

 青野ダムで起こっているポイ捨て込みと迷惑駐車の問題については、このコーナーでも過去に何度もレポートしてきた。今年になって、青野ダムを取り巻く様々な問題を解決するために、兵庫県の主導で青野ダム湖利用適正化推進会議が活動をスタートしている。

 青野ダムゴミ拾いオフは、このような状況を少しでも解決するためにスタートしたボランティア活動で、ゴミを拾って青野ダムをきれいにするという目的だけのために、毎回大勢のアングラーが集合している。今回集まった参加者の中には、3組の家族連れや多数のカップル、遠くは奈良県からの参加者もあった。

 このコーナーで青野ダムの環境問題を取り上げるようになったのは、実はゴミ拾いオフの幹事の1人である立柳晋平さんから「青野ダムが釣り禁止になるのでは?」というメールをインターネットを通じていただいたのがきっかけだ。その後、兵庫県の出先機関として青野ダムを管理している北摂整備局への取材や、もう1人の幹事であり三田市民でもある大原久典さんによる地元での調査などを通じて状況が次第にあきらかになるとともに、「このままではいけない。何か自分たちでできることを」ということでゴミ拾いオフがスタートした。

 このような関係から、著者自身も本当は第1回のオフから参加したかったのだが、アメリカでの取材に重なったり、日程があいているときのオフのときに台風が来て中止になったりで、今回、3回目にしてようやく初参加することができた。

 ゴミ拾いオフは午前7時にダムサイトの駐車場にメンバーが集合し、午前9時過ぎまでの実質約2時間、グループに分かれてゴミを拾って回る。12月14日は好天に恵まれ、気温は低かったが、真剣にゴミを拾っていると寒くはなく、体が温まってくると上着を脱ぎたくなるぐらいだった。ゴミの中には、明らかにアングラーが捨てたと思われるものもある一方で、生活ゴミの不法投棄としか考えられないものも多数あった。メンバーはそういうゴミも区別せず集めてくる。これは、青野ダムを少しでもきれいにすることが目的、という考え方をしているからだ。そのほかにはタバコの吸い殻と、キャンデーなどを一つ一つ包装している小袋が多いのが目に付いた。

 31人のメンバーが集めたゴミの量は、軽トラックの荷台にちょうど山積みになるぐらいで、たった2時間の活動でこんなに集まるのか、と感心してしまった。もし、もっと大勢の人数が、もっと長時間かけてゴミを拾ったら、恐ろしい量のゴミが集まるのではないかと思ったりしたのだが、これでも夏場などにくらべて、ゴミの量ははっきりと減っているのだそうだ。これはオフシーズンになって青野ダムへやってくるアングラーの数が減っているということもあるが、継続的にいろんなグループがゴミ拾い活動を行っている成果でもある。今回のゴミ拾いオフの直前にはカヌーのグループや地元の婦人会がゴミ拾いをしたということだった。

 週刊ルアーニュースは今回が新年合併号だ。こういうときは景気のいい、おめでたい話がふさわしいのかもしれないが、あえて青野ダムゴミ拾いオフについて紹介させていただいた。

 今にして思えば、97年はバスフィッシングブームが継続する中、様々な問題が顕著になった反省の1年でもあった。それと同時に、問題を解決するために具体的な行動を起こすアングラーが少なからず現れ始た年でもある。

 残念ながら今のところ、自らの立場や評価を高めることを目的に、いろんな問題について口先だけ、ペン先だけで語っているアングラーがいることも事実だ。しかし、その一方で、実際に行動を起こすアングラーが増える傾向にあるのは間違いない。その人数がさらに増え続け、それをバックアップする勢力が強くなれば、様々な問題もいつかは解決することができると思う。98年が、そのような明るい未来へのスタートの年になることを願ってやまない。

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