Teck Performer Vol.2

山内 稔
岸釣りメタルブレード

Teck Performer

■琵琶湖ならではの岸釣り

 春の早い時期の琵琶湖、におの浜の護岸にズラリと並んだ大勢のバスアングラーが、ルアーを思い切りフルキャストしています。ベイトリールがヒューンと甲高い唸りを上げてラインを吐き出し、ルアーの着水点ははるか向こう。その圧倒的な飛距離は軽く60mを越えています。ロッドがブンブンと風切り音を立てるぐらい強いアクションでルアーをリフトアンドフォール。そのルアーが落ち切る瞬間、強くあおったロッドが満月に。グイグイと強い引きを耐えて慎重に寄せて来たラインの先に大きなバスが……。

 冬のビッグレイクのオープンウオーターに向かってルアーを思い切りキャストする爽快さは琵琶湖ならでは。そして、釣れるバスの目を見張るような大きさも他の釣り場では考えられません。そこで活躍しているのがメタルブレードから進化したエビメタルです。

 メタルブレードは琵琶湖だけでなく他の釣り場でも実績が出ていて、愛用するアングラーが多くなっています。その意味では、今まさに発展途上にあるルアーと言えるでしょう。エビメタルはそのバリエーションの一つとして、さらなる進化が期待されているルアーでもあります。

■サスケレプリカ+ラバースカート=エビメタル

 エビメタルの誕生経緯ですが、まずサスケレプリカの存在があります。ジャッカルの加藤誠司さんが月刊ロッド&リールやバスワールドの別冊で発表されたメタルバイブがサスケブレードの原型で、その設計図と解説を参考に自分で手作りしたルアーがサスケレプリカです。驚異的な釣果があり、サスケブレードを元にしたレプリカであることから冗談まじりにサスケレプリカと呼んでいました。この名前は今でもエビメタルより有名だと思います。最初は自分が使うためだけに手作りしていたのですが、親しい人達に使ってもらってバスがよく釣れたので、少量ながらショップで販売するようになりました。そうするうちにジャッカルからも本家本元のサスケブレードが発売されたりして、次第にメタルブレードが琵琶湖の岸釣りルアーとして定着していったのです。


ジャッカル・サスケブレード


サスケレプリカ


サスケレプリカ・改


エビメタル

 春の早い時期はメタルブレードをリフトアンドフォールで使っていますが、ゴールデンウィーク頃からタダ巻きに分があるようになります。このタダ巻き用にアレンジしなおしたのがサスケレプリカ・改の始まりで、エビメタルはそのウエイトバランスを受け継いでいます。当初はよりスローに引きたかったので、ウエイトの上に幅広のヘッド形状のものを付けていました。その方がよい動きをすると思ったわけです。ところが使っているうちにヘッドがなくても動くことがわかり、ヘッドなしになりました。これが京都市山科区のタックルショップ・バスフィールドの店長の手に渡り、店長が「髭を付けたんですが、どうでしょうか」と見せてくれたのがエビメタルの原形です。ですからエビメタルの髭の発案者は私ではなく、バスフィールドの店長ということになります。そのためエビメタルはバスフィールドの特注品ということになっていて、今のところ他のショップでは売っていません。

■エビメタルの種類

 エビメタルには6cmと6.5cmの2サイズがあります。6cmのエビメタルJrは重さ16gと20gの2アイテム、6.5cmのエビメタルは17g、21g、24g、27gの4アイテムで、合わせて2サイズ6アイテムということになります。

 ウエイトによる違いですが、一番使いやすいのは17gか21gだと思います。24gにくらべると飛距離は落ちるのですが、一番小気味よく動いてくれます。24gはよく飛ぶのですが、引き抵抗が強く、長時間しゃくり続けるには少々体力が必要です。27gに関しては完全にエキスパート向けで、これをフルキャストするにはかなりの慣れが必要です。フルキャストできれば飛距離は圧倒的ですが、本来は白波が立っているような荒れ気味のときに底を引きたいがためにヘビーウエイトにしたものです。エビメタルJrは小さくした分、振動は小さくなりましたが、振り数は多くなっています。

■エビメタルと他のメタルブレードの違い

 サスケ系とエビメタルの違いですが、サスケ系はロール系の動きでリフトアンドフォールのひとシャクリでの移動距離が短く、それほど高く浮き上がりません。エビメタルの方は典型的なメタルバイブのウオブルな動きで、移動距離も長く、高く浮き上がる動きをしています。飛距離に関しては、ウエイトの位置に違いがあり、エビメタルの方がよく飛びます。ロッドに伝わる振動ですが、サスケ系の方がエビメタルよりも引き抵抗が強く感じられます。サスケ系とエビメタルでは動き方がまったく違うので、その日の状況によって使い分けが必要だと思います。

 普通のソナーとの違いですが、まずソナーのボデイは真鍮でエビメタルはアルミです。そのためウエイトのバランスが違ってきます。また、エビメタルはウエイトが球形ですので、それを抜ける水流もソナーとは違い、アクションに影響を与えています。

■髭の効果

 エビメタルの髭の効果ですが、髭の抵抗による水中でのフォール時の姿勢の違い、フォールスピードの違い、着底時の髭の動きによるアピールなどが考えられます。ですからエビメタルをアクションさせるときは、普通のメタルブレードよりも心持ちスローテンポを意識するのがよいでしょう。これは他のメタルブレードでも言えることですが、このわずかなリズムの違いが釣れる釣れないに大きく影響します。タダ巻きルアーにはない難しいところです。

■タックル

ロッド オリムピック・ボスコ69MH
リール ダイワ・アルファス103L
ライン サンライン・ベーシックFC14lb
ルアー MY'sオンリーファクトリー・エビメタル17g、21g、24g

 タックルについては、強くシャクラないといけないのでMHかHクラスのロッドで、遠くへ飛ばすために長さ6ft8in〜7ftがよいと思います。ラインですが、におの浜は足元が石畳になっているので、大きなバスを掛けて左右へ走られたときに根ズレしても切れないだけでなく、重いルアーをフルキャストしても切れないだけの太さが必要です。私はフロロの14lbを使っています。リールに巻く量は、追い風になるとラインが75m以上出ることがあるので、それ以上は巻いておかないといけません。

 ナイロンとフロロの違いですが、強くシャクッたときのルアーへの力の伝わり方が違って、ナイロンはやはりちょっとダルな感じになります。60mを超えだすと感度が極端に落ちてしまい、動かす幅が大きくなり過ぎたり、細かい操作ができない、掛かったウィードを切り外し難い、フォール時のバイトを感じ取り難い、アワセたはずがラインの伸びでアワセられていなくて簡単にバレるなどの問題が多発するので、特に遠投で使うときはフロロがよいと思います。ただし、飛距離だけのことを考えるとナイロンの方がよく飛ぶので、どれぐらい飛んでいるかによって使い分けるのがよいでしょう。シャクッたときの水切り音はナイロンの方が静かな気がするのですが、私は水切り音についてはあまり気にしていません。

■テクニック

 エビメタルは本来リフトアンドフォール用ですので、底まで落としてシャクッてください。当たるシャクリ方はその日の状況によって違ってきます。強くシャクッたときに反応がある日もあれば、ゆっくりのリフトアンドフォールに反応する日もあります。自分のシャクリ方に自信が持てないときは、釣れた人のシャクリ方を真似するのが早いかもしれません。

 バスがバイトしてきたときのアタリですが、厳冬期に向かって水温が落ちていくときは、ルアーが動いているときにアタッてくることが多く、逆に水温が上がり始める3月、4月になるとフォール中にアタッてくることが多いように思います。

 エビメタルは安定してよく飛ぶルアーですが、飛距離が落ちたり飛行姿勢が悪くクルクル回るときは、ボデイがわずかに曲がっていることがよくあります。上から見て真っ直ぐになるようにボデイを修正してください。ただし、アルミ製のボデイは金属疲労を起こしやすいので、あまりにもひどく曲がったときは修正せずに使用を控えてください。

 ウィードの多い所ではダブルフックに付けかえることをお勧めします。そのときはフロントフックを#2、リアフックを#4か#2にします。小さなボデイに対してフックが大きいような気がしますが、フックを小さくし過ぎると動かなくなってしまいます。通常サイズのフックのときは、フックを振る水抵抗でルアーの動きが抑えられていますが、その抵抗が小さくなると力が出過ぎて暴走してしまいます。少しの暴走だと、ひっくり返りやすくなる程度ですが、さらに力が暴走し過ぎると動かなくなってしまう現象が起こります。

 エビメタルに付いて来たウィードを取るときに髭を一緒に抜いてしまうことがよくありますが、修し方は折り曲げたラインを髭が通っていた穴に通し、これにラバーを入れて引き抜けば通すことができます。ファインラバーなら8本くらい、がまかつの0.6mmのラバーは3本通ります。いろいろなラバーを自分なりにアレンジしてみてはいかがでしょうか。その際の注意点ですが、ラバーの本数を増やしたり長くし過ぎると、飛距離が落ちたり動きが弱くなったりすることがあります。

 エビメタルは見た目が小さく生命感もないので、よほど釣れなければアングラーから見向きもされないルアーかもしれません。それをたくさんの方に使っていただき、釣っていただいています。作っている者として、とてもうれしく思っています。ありがとうございます。

 最後にお願いですが、金属の塊みたいなルアーなので、キャストするときは周囲に十分気を付けてください。それでは、エビメタルでぜひよい釣りを!!

解説
山内 稔
(やまのうち・みのる)

サスケレプリカ、エビメタルの作者。1969年生まれ。京都市在住。中学時代からバス釣りを始め、一時バイクにハマり全国を走り回るが、12年ほど前から再びどっぷりバス釣りに戻る。ルアー製作は98年頃、雑誌の賞品ほしさに本格化する。小型ルアーが大好きで主に4gクラスのトップ系を作ることが多かったが、雑誌に載っていたサスケの設計図を見て製作し使用したところよく釣れたのが広まり、改良、改造されオリジナル化した。エビメタルのブランド名MY'sオンリーファクトリーのMYはイニシャル、オンリーファクトリーは1人工房からであることからの命名。

データ
店長つり日記
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222フィーバー

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