Presented by B.B.C./Biwako Bass Communications

97年8月8日

新しい単行本の前書き

 昨年末に発売した単行本「琵琶湖のバスフィッシング」のパート2にあたる新しい書籍「琵琶湖のバスフィッシング超データベース」を現在、制作中だ。発売はおそらく10月前半ごろになると思うが、この本のために書いた前書きをここで紹介しておきたい。この前書きは、8月9日に日本からアメリカへ向かう飛行機の中で書いたもので、ロサンゼルスのプロバイダーにホテルからPPP接続して、日本にあるサーバー内のホームページをアップデートしている。今後、Bassingかわら版では、できればこのような形で、いろんな本のために書いた原稿をできあがり次第すぐに読めるようにしていきたいと思っています。

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 まず最初に、この本の前作にあたる「琵琶湖のバスフィッシング」を発売したときのエピソードをご紹介しておきましょう。
 発売から確か2、3カ月ほどたった、琵琶湖の雄琴港でのことです。このときは本書にも登場する村上晴彦さんの取材に行ったんですけど、車を停めてカメラの準備をしているときに、若いバスアングラーの方に声をかけていただきました。
 「服部さんですね。新しく出た本を買って読みました。おかげで上達しました」
 「どうもありがとう。そやけど、本を読んだぐらいで、そんなに簡単に上達するもんやないやろー」
 そのアングラーは一瞬、キョトンとした後
 「えへへ。確かにそうですねー」
 と言いながら、軽く握手して立ち去りました。
 本を読んでいただくのはありがたいんですけど、それだけでバスフィッシングがうまくなると思ったら大間違いです。やはり、フィールドワークが伴わなければなりません。バスフィッシングというのは、情報の収集や分析という知的な面と、フィールドで実際にロッドを振って振りをするという肉体的な面を両立させて初めて成功するスポーツです。もし本を読んだだけですぐに上達できるアングラーがいたとしたら、その人は最初からうまいか、あるいは天才かのどちらかだと思います。ひょっとしたら雄琴港で会ったアングラーは、このうちのどちらかだったんでしょうか。

 90年代後半にやってきたバスフィッシングのブームは、フィールドの環境だけでなく、タックル市場や情報流通をも大きく変貌させました。市場には度を過ぎたレアモノブームが蔓延し、人気商品はよほど運がいいか、あるいはショップやメーカーによほど特別なコネを持っていないと、まともに手に入らない始末です。さらに加えて、メディアの乱立による情報の質の低下により、このような状況を解消するどころか、火に油を注ぐ結果となっています。
 琵琶湖のバスフィッシングも急激にかわりつつあります。この本の前作にあたる「琵琶湖のバスフィッシング」では、琵琶湖のバスの季節的な動きや釣り方の変化を中心に基本的な解説をしました。ところが、たった2、3年の間にすっかり様子がかわってしまい、そのままの釣り方や考え方ではバスを手にできなくなってしまっているケースが少なくありません。
 バスフィッシングは日々進化し続けていますから、これは当然のことかもしれません。しかし、変化があまりにも急なために、ついていけないアングラーが多くなっているのも事実です。バスの習性やバスフィッシングの基本がかわったとは決して思いませんし、基本通りの釣り方や考え方がそのまま通用するケースも、もちろんあります。ところがその一方で、ものすごく多くのアングラーが詰めかけるようになった結果、絶え間ないフィッシングプレッシャーによってバスの行動が微妙にかわり、より繊細でテクニカルな釣り方でないとバスが釣れない、ということがあたりまえになっています。
 本書では、前作「琵琶湖のバスフィッシング」以降に書いた琵琶湖に関する原稿を単行本のために再構成して、読みやすくまとめました。さらに、96年9月から97年8月にかけて「週刊ルアーニュース(名光通信社刊)」に掲載された、琵琶湖周辺のタックルショップやレンタルボート店のフィールド情報も収録しています。
 これらの原稿は、アングラーやタックル、テクニック、フィールドなど題材は様々で、中には人気ルアーの流通問題に触れた部分もあります。その意味では、琵琶湖のバスフィッシングの最新状況を反映していると言えるでしょうが、ただ単に、こういう釣り方が効果的だ、ここへ行けば釣れる、という類の内容に終始しているわけではありません。
 例えばフィールド情報一つ取り上げても、ここで釣れた、こういう釣り方がよかった、という結果は毎年違っても、何年ものサイクルで見てみると、毎年かわらない共通の傾向というのが発見できるものです。釣り方にしても、特定のルアーやテクニックがなぜその時期にその場所で効いたのかという理由を考えることで、状況がかわったときに誰よりも早く正解を見付けるための知識を身に付けることができます。
 この本の内容は非常に幅広く多岐に渡っていますが、その一つ一つを正確な知識として身に付け、これらを有機的に結び付けることにより、琵琶湖のバスフィッシングをより深く理解し楽しむことができるでしょう。その意味では、前作「琵琶湖のバスフィッシング」といっしょに読んでいただければ、さらに深い理解が得られると思います。
 琵琶湖のバスフィッシングに関する本も、97年になって次々と刊行されるようになりました。情報が増えることは、バスフィッシングをさらに深く楽しみたいと思っているアングラーにとって歓迎すべきことです。琵琶湖から卷き起こった出版活動が全国規模で盛んになり、さらに多くの出版物が刊行されることによって自然淘汰の原理が働き、その結果、本当に内容のあるバスフィッシング関係の書籍が一点でも増えることを願ってやみません。
 97年に刊行された本の中に、下野正希プロによる「琵琶湖バスフィッシングガイド(えい出版社刊)」というA4版のムックがあります。本書でもフィールド関係の紹介はしていますが、琵琶湖はあまりにも広く、すべてを網羅するのは著者の手に余る仕事です。その点、さすがに琵琶湖でバスフィッシングのガイドをやっている下野プロが航空写真を駆使してまとめたこの本は、さすがと言えるでしょう。琵琶湖のほとんどのポイントを網羅するばかりでなく、フィールドから見た琵琶湖のバスフィッシングの本質を見事に捉え切っています。
 本書の様々な情報を活用するのと同じように、新聞や雑誌、書籍、ビデオ、テレビ番組などからの情報をアングラー自身がしっかりと理解し、有機的に組み立てた上で自分の釣りに活用する。琵琶湖では、現実にそのようなことが可能になりつつあります。琵琶湖ほど情報量が豊富なフィールドは、おそらくアメリカにもないでしょう。
 バスフィッシングにおける、より洗練された情報流通。それは、アングラーが本当に必要とする情報が、現在よりもはるかに豊富に、しかもきわめてスピーディーに、いろんなメディアを通じて流通することです。新しいメディアには、インターネットやCS多チャンネルTV放送なども含まれます。
 旧態依然とした一部メディアの中には、新しい状況への転換を阻害することによって個の利益を守ろうとするところが出てくるでしょう。しかし、現在の琵琶湖のように情報の豊富な環境を経験したアングラーにとって、そのような抵抗は無意味で、もはや何の効果もありません。そして、琵琶湖で卷き起こった情報化の波は、瞬く間に全国のバスフィールドに広がっていくはずです。
 バスフィッシングの情報新時代を実現するために、本書が少しでも役に立てば、著者にとってこれ以上うれしいことはありません。あとは読者の皆さんが、より良質なメディアを正しく選択していただけるかどうかにかかっています。
 21世紀になってバスフィッシングが本当に面白い遊びとして生き残ったとき、ブームを超越してこの遊びを続けている未来のアングラーに本書を捧げます。

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