Presented by B.B.C./Biwako Bass Communications

04/01/17

次々に出てくる
リリース禁止条例の問題点

 滋賀県琵琶湖のフィッシングガイドで遊漁船業法に則った登録もしているバスアングラーが、バスボートの検査に際して船検証に記載された用途がプレジャーボートになっているのを遊漁船に切りかえた方がいいのかどうかを滋賀県水産課に電話で問い合わせました。プレジャーボートのままで遊漁船の営業を続けていいのか、その場合、「滋賀県琵琶湖のレジャー利用の適正化に関する条例」に定められた外来魚のリリース禁止に抵触することはないのかということを念のため確かめようとして、遊漁船登録を担当する水産課へ電話したわけです。

 電話に出た水産課の担当者は、プレジャーボートのままで遊漁船の営業を続けても問題はないと返事したものの、リリース禁止条例に関する判断はできず、電話は自然保護課に回されたそうです。遊漁船登録は水産課の担当だけど、リリース禁止に関する判断は自然保護課の担当というわけですね。

 自然保護課の担当者の返事は、やはりプレジャーボートのままで問題はないとのことだったそうなんですけど、「これってどういうことですか?」とそのフィッシングガイドが言ってました。「船検証に書いてある用途っていったい何なの?」「遊漁船って何?」「プレジャーボートって何?」と思ってしまう返事です。かと言って、B.B.C.服部に「どういうことですか?」と聞かれても困るんですけどね。

 これはプレジャーボートのままで問題がないというよりも、そんなややこしい問題は避けて通りたいという県側の姿勢がはっきりと出てる返事ですね。レジャーで琵琶湖を利用する者だけを対象に外来魚のリリースや2サイクルエンジンの使用を禁止しようとする条例の矛盾が、施行後半年以上がたっていろんなことが起こってくるたびに現れてくるわけです。

 2003年4月から改正遊漁船漁法が施行され、フィッシングガイドは遊漁船登録しないと営業できないことになりました。そうなると、遊漁船登録したフィッシングガイドは法律の元に仕事としてバスを釣ってるんだから、レジャー利用者だけを対象にしたリリース禁止条例は適用されないことになります。ガイドとしてゲストを同船させて釣りをしてるとき以外でも、ガイドの下調べや練習と遊びの区別はできないから、常時リリースしていいんだそうです。これはフィッシングガイドが勝手に言ってるんじゃなくて、水産課の公式見解です。つまり、ここにも矛盾があるわけですね。

 それならバスフィッシングでお金を稼いでるバスプロはどうかと言うと、トーナメントなどは遊びの延長線上にあるからリリース禁止の対象に含まれるんだそうです。釣りだけで年間収入のすべてを得てるバスプロなら、ガイドと同じでトーナメントもそのためのプラクティスも雑誌やテレビの取材もルアーやタックルのテストもすべて仕事のはずなんですけど、水産課の判断によるとこれらも遊びの延長ということでひとくくりにされてしまってます。このあたりは、裁判でもしたみたら別の判断が下される可能性が十分ありそうな微妙な問題です。

 それでは、2サイクルエンジンの規制はどうかと言うと、専門家の話では、こちらの方がもっと難しい問題をはらんでるそうです。例えば、琵琶湖でよく走ってるウエイクボードのボートの中には、遊びで走ってるのもあれば、お客さんがウエイクするのを引いて営業で走ってるボートもあります。それをどうやって区別するかとなると、船検証にプレジャーボートと記載されてるだけなのはバスフィッシングのガイドと同じだし、ガイドのボートには遊漁船登録の表示があるけど、ウエイクのボートにはそんなものありませんから、見かけ上区別できる点は何もありません。つまり、営業実態がないということを調べ上げない限り、違反の証明ができないわけです。違反の疑いがあるすべてのボートに対して、そんな調査をするのはたいへんなことです。しかも営業してるのを調べるのなら簡単ですが、営業してないという事実を調べて証明するなんてことが現実的に可能でしょうか。つまり、取り締まりは不可能だということになります

 これに対して滋賀県がどのように対策しようとしてるかと言うと、現在のところ何も知恵はなさそうです。真面目に取り締まりする気なんて、最初からないんですね。おそらくは、昨年春にリリース禁止が始まったときのように、みんなが楽しく遊んでる所へ大きな船で乗り込んで言って、うるさくマイクでがなり立てるぐらいが関の山なんじゃないでしょうか。相手がおとなしいバスアングラーだから、そんなことされても黙ってましたが、相手がウエイクや水上バイクとなると……。釣りに関係ないから、そんな余計な心配はやめておきましょう。去年の春みたいに相手をなめてかかったら、今度は何が起こるかわかったことでないのは、賢明な関係各位はよくご存じですよね。監視員各位におかれましては御身お大事にと老婆心ながら申し添えておきます。

 このように、リリース禁止条例の施行後1年もたたないうちに、いろんな問題点が現れたり指摘されたりしてきました。それでも滋賀県は「ご理解いただくよう努力を続ける」だけの姿勢はかえそうにありません。つまり、論理や話し合いではなく、県議会の全員一致などという今時めずらしい高度の政治的判断で成立したリリース禁止条例だから、当事者への説明や理解がなくても押し通し続けるしかないんですね。

 ということは、これを押し返すには政治家や官僚を巻き込んだからめ手やお金の力も含めた実力行使も必要なのかもしれません。それで何かが決まったときには、やっぱり高度の政治的判断だから、環境保護運動家や漁業者が何を言ってもどうにもならないということになるわけです。全国的なリリース禁止の圧力を押し返して、ゾーンニングのような問題解決策を現実のものにしていこうというときには、今は反対の側にいる勢力のうち殺すべきは殺し、味方に取り込むべきはいろんな手段を使って取り込んでいく知恵と技が必要なのかもしれません。

 ただし、誰かがそんなことをやろうとするときには、それを支持するバスアングラーのまとまりとパワーがなくてはならないはずです。それでは、バスアングラーのまとまりとパワーって、具体的にはどういうことなのか。バスアングラーが釣りクラブを作って、それが連盟を組織して団結することなのか。あるいは、ほかにパワーを得る方法があるのか。これからはそういうことも考えていかないといけないんじゃないかと、滋賀県水産課への電話の話を聞いていろいろ考えてるうちに思い至りました。

 最初に登場したフィッシングガイドは、さらに小型船舶検査機構にも電話して聞いてみたそうです。こちらの返事は明確で、船検証の用途を遊漁船に書きかえることはいつでもできるから、そうすればよいとのことでした。そのためには検査の費用に手数料が加わって高くなるそうです。こっちは書きかえればいいと言ってるし、県の方は書きかえる必要はないと言ってるし、結局どうすればいいのかわからないから、とりあえずプレジャーボートのままにしといて、県の方から何か言われたらそのときに考えようかという結論になったらしいんですけど、たぶん県の担当者はバスボートの登録や運航実態がどんなことになってるかなんて知らないんでしょうね。

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