Presented by B.B.C./Biwako Bass Communications

Editorial
Vol.46(04/12/31)

2005年は重大な決断の年になりそう

 特定外来生物被害防止法で指定する特定外来生物にバスを含めるかどうかの審議が現在進められている。通常のスケジュールなら、2005年1月頃までに審議を終えた上でパブリックコメントの募集を行い最終決定する段取りになるのだが、バスに関しては問題が非常に複雑で、そう簡単に片付きそうにない。バス専門家小グループから魚類専門家グループに議論が戻され、継続審議に付されるのではないかというのが大方の見方だ。その場合でも2005年中には最終決定して、日本のバスとバスフィッシングの運命が決まることになる。

 バスを特定外来生物に指定しないことを望むアングラーと釣り業界からの意見として、ゾーンニングによりバスの拡散をコントロールした上でバスフィッシングを継続することが提案されている。それに対する指定を望む側の意見は、バスの拡散をバスアングラーと釣り業界の責任であると根拠なく決め付け、犯罪者にゾーンニングなんか不可能としている。ここまでは今までの議論の蒸し返しだ。

 ならばこれから問われるのは、ゾーンニングが可能かどうか、まさにそのことになってくる。つまり、定められた釣り場でバスフィッシングを楽しむことが認められたときに、そこからバスを持ち出さない、他の水域に不法放流をしないというルール作りができるかどうかと、それをバスフィッシングに関わる全員が守るかどうか、守らせるための体勢作りができるかどうかが問題になる。さらに釣り場の選定にからんでは、地元との話し合いや調整能力も問われるだろう。

 そういうことを誰がするのかもさることながら、今までは釣り場にいても主権をないがしろにされ続けてきた一般のアングラーをどうやって議論に巻き込むかという問題もある。それができなければ、ルールを作ったところで蚊帳の外に置かれたアングラーには問題の重大さが認識できないから、守らないアングラーがたくさん出てくるかもしれない。それなら強力な監視体制を敷く? 見せかけだけならそれもいいだろうが、十分に監視できるかできないかは釣り場による。強権的に物事を進めようとすれば、ごく特定の限られた釣り場でしかゾーンニングによるバスフィッシングは不可能ということになってしまうだろう。

 つまりこれから問題になるのは、誰かがどこか知らない所で勝手に決めるのではない、アングラーと業界が一体となった意志決定ができるかどうかということだ。そのことがわかってるんだったら、できることの具体例として琵琶湖で何かしようというときに、急きょオフレコの密室会議を開いて決めようとすることの愚は理解できるはず。オフレコということは、オフレコにしないといけないようなことを話し合ってると思われても仕方ないんだからね。業界のエライ人達は、この期に及んでいったい何考えてるんだ!! あるいは何も考えてないからこういうことになるのか。とにかく、考えてることや知識が2周ぐらい周回遅れしてるから、これから先どうなるか、大切な議論をまかせておいていいものかどうか、とても心配。そんな人達のお相手をしないといけない誰かさんはたいへん。これってもしかしたら、誰かさんの足を思い切り引っ張って仕事できないようにして、それで自分達の仕事を有利に運ぼうという作戦か……。

 それで一般のアングラーの知らないうちに何かが決まったとして、それが一般のアングラーの意志を無視したものだったらどうなる。協力するのは、どこかの宗教団体とその信者だけかも。あるいは、それでいいと割り切ってやってるのかもしれない。その結果、ごく限られた特定の人達だけが望むような釣り場がゾーンニングと称して全国各地に確保され、それ以外のフィールドは閉ざされる。特定の人達とは楽しみ方を異にする多くのアングラーは、そうなったらバスフィッシングをやめてしまうだろう。それでもかまわないのかもしれない。競争相手がいなくなって、自分達とその取り巻きと特定の人達だけの幸せが続けばそれでオーケー。これって、十分あり得る話ではなかろうか。

 バスが特定外来生物に指定されたらどうなるか。これは12月29日のB.B.C.ホット情報でも書いたことだが、その影響はバスフィッシングに限らず、すべての釣りと内水面漁業全般に及ぶだろう。その最悪の結末は、釣りと内水面漁業の共倒れ。後に残るのは、荒廃し切った湖、池、川。おそらくそこでは、ゲリラ活動さながらのバスフィッシングが続くだろう。なぜなら、特定外来生物に指定されたバスをどう管理するかは環境省の責任で、指定に反対した一般のバスアングラーや業界の力の及ぶところではないから、不法放流等の監視や取り締まりもおまかせするしかない。それ以前に、バスアングラーに何か協力してもらおうったって、みんなバスフィッシングやめちゃって人がいないから協力のしようがないし、業界も縮小しちゃってて、お金がないから何もできない。

 結局、特定外来生物指定は何の意味もなく、いいことは何もなかったってことになりかねない。現実はその中間のグレーゾーンに収まるだろうが、琵琶湖のリリース禁止のように釣りを楽しみ続けることができるかどうかはきわめて怪しい。指定が濃厚なスモールマウスバスの釣り場である長野県野尻湖や福島県檜原湖では、指定されても積極的な駆除を行わないように働きかけることで釣り場としての存続の道を探っているが、先行きが暗いことにかわりはない。それなら、とっととほかの遊びに鞍替えした方が賢明と考えるアングラーがたくさん出てきたとしても何の不思議もない。世の中には楽しい遊びがたくさんあるからね。そんなことになってもバスフィッシングを続けようとする、あるいはバスはあきらめてもほかの魚釣りは続けようとする本当の釣り好きはどれぐらいいるだろうか。そんなありがたいお客さんを業界は今まで大切に扱ってきただろうか。今頃になってそんなことを考えても手遅れというものだが、まあ何も考えないよりはましだから、一度真剣に振り返ってみるのも悪くないだろう。

 バスの特定外来生物指定を回避するために求められているのは、具体的にどのような形でゾーンニングを行うかということをアングラーも含めた意志決定により具体的に示すことだ。それができなければ、たとえ指定されずにゾーンニングが進むにしても、他の釣りも含む一般のアングラーは議論の外に置かれたまま、釣り場は利権と利害の巣になっていくであろう。その結果、日本のバスフィッシングがどんな世界になっていくかは、一部そういう釣り場がすでにあるので今さら説明するまでもないと思う。

 それができるかできないかというところで、2005年はバスアングラーにとって重大な決断を迫られる年になりそうだ。もういいかげん、ノーと言うべきははっきりと言わないといけない。そんなこともできないアングラーが多数を占め、それを業界が利用してる構図がこれから先ずっと続くんだったら、自分達はそんな釣りはいらない。もうやめるという選択肢も含めて、間もなく重大な決断のタイミングがやって来そうである。

Bassingかわら版Editorialのバックナンバーへ